ワシのヒナ命名コンテスト、市民の悪ノリ「Eagle McEagleFace」再び?
米国で孵化したハクトウワシのヒナ2羽の命名コンテストが始まりました。しかし、その告知には奇妙な一文が添えられていたのです。「2羽とも"Eagle McEagleFace"(ワシワシ・マクワシフェイス)と名付けるのは混乱を招きます」。
これは一体どういうことなのでしょうか。実はこの珍妙な注意書きの裏には、インターネット史に刻まれた、とある壮大な「悪ノリ」の歴史が存在するのです。人類の愛すべきくだらなさが、また一つ花開こうとしています。
## 「紛らわしい」という斜め上の警告
このコンテストは、米国のとある自然保護団体がライブカメラで成長を見守っている2羽のハクトウワシのヒナを対象に実施したもの。一般から名前を公募し、親しみを持ってもらおうという、よくある企画です。
しかし、主催者は過去の事例から学習していたのでしょう。ネットユーザーが悪ふざけで投票することを予見し、先手を打ってきました。面白いのはその警告の仕方です。「禁止します」と頭ごなしに否定するのではなく、「2羽とも同じ名前だと、我々が混乱するのでやめてね」という、なんとも人間味あふれる理由。そのユーモアのセンス、嫌いじゃありません。
この「Eagle McEagleFace」という、ふざけているようでどこか語呂の良い名前。これこそが、世界中の命名コンテスト主催者を悩ませてきた、悪夢のミームの亜種なのです。
## すべては英国の調査船「Boaty McBoatface」から始まった
全ての元凶は、2016年に英国で起きた「Boaty McBoatface(船野郎マク船面)」事件に遡ります。
英国自然環境研究評議会(NERC)が、約2億ポンド(当時のレートで約370億円)を投じた最新鋭の極地調査船の名前を一般公募したところ、事件は起きました。元BBCのラジオ司会者がジョークで提案した「Boaty McBoatface」という名前がネットで爆発的に拡散。なんと12万4,109票というとてつもない支持を集め、2位に10万票以上の大差をつけて圧勝してしまったのです。
もちろん、国の威信をかけた調査船に「船野郎マク船面」と名付けるわけにはいきません。結局、船の名前は著名な自然学者であるサー・デヴィッド・アッテンボローにちなんで「RRS Sir David Attenborough」に決定。しかし、NERCはネット民の熱意を無下にはできず、この船に搭載される無人潜水艇に「Boaty McBoatface」と名付けるという、粋な計らいを見せました。この一件は、権威とネット民のユーモアが奇跡的な和解を果たした事例として、伝説となったのです。
## なぜ「〜Mc〜Face」は世界中で増殖するのか?
この事件以降、「〜y Mc〜face」のフォーマットはインターネットのお約束として定着しました。オーストラリアではシドニーの新しいフェリーが「Ferry McFerryface」、スウェーデンではストックホルムとヨーテボリを結ぶ高速鉄道が「Trainy McTrainface」と名付けられそうになる事態が続発。果てはオーストラリアの競走馬が「Horsey McHorseface」と正式に命名されるケースまで現れました。
なぜこの奇妙な名前は、これほどまでに人々の心を掴むのでしょうか。一つは、その馬鹿馬鹿しいまでの語感の良さ。そしてもう一つは、公的なもの、権威的なものに対して「ちょっとイタズラしてやろう」という、ささやかな反骨精神の表れでしょう。普段は真面目な市民が、匿名性の高いインターネット上で、巨大な悪ふざけに参加する一体感。それは現代のお祭りの一種と言えるのかもしれません。
## 愛すべき悪ふざけと公共性のジレンマ
市民参加を促すための公募が、コントロール不能な「お祭り」と化してしまう。主催者にとっては頭の痛い問題です。しかし、今回のワシのコンテスト主催者の対応は、一つの進化形を示しているように思えます。
彼らはネットの悪ノリを「くだらない」と切り捨てるのではなく、「君たちのやりたいことは分かっているよ」と、ユーモアで応戦しました。これは、ネットカルチャーへの深い理解がなければできない、非常に高度なコミュニケーションです。頭ごなしに禁止されるよりも、こうしてクスッと笑える理由を提示された方が、ユーザーも「一本取られたな」と納得しやすいもの。
このワシのヒナたちの名前が、最終的にどうなるのかはまだ分かりません。「Freedom」や「Liberty」といったアメリカらしい名前になるのか、それともネット民が裏をかいて「Eagle McEagleFace 1号」と「Eagle McEagleFace 2号」で投票するのか。いずれにせよ、この騒動自体が、ヒナたちの門出を祝う最高に愉快なエールであることは間違いないでしょう。次に日本の動物園でパンダの赤ちゃんが生まれたら…なんて、考えるだけなら自由です。きっとあなたの頭にも、あの名前がよぎっているはずですから。
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よくある質問
- Boaty McBoatface事件とは何ですか?
- 2016年に英国の新型調査船の名前を公募した際、冗談で投稿された「Boaty McBoatface」がネットで拡散され圧勝した事件です。結局、船には別の名前が付きましたが、ネット命名の象徴として伝説になりました。
- 「Eagle McEagleFace」の元ネタは何ですか?
- 英国の「Boaty McBoatface」事件が元ネタです。「(名詞)y Mc(名詞)face」という命名形式はインターネットミームとして定着しており、世界中の様々な命名コンテストで同様の投稿が見られます。
- なぜ主催者はこの名前をわざわざ警告したのですか?
- 過去の事例から、投票でこの名前が人気になることを予測したためです。「2羽いるから紛らわしい」とユーモアを交えて牽制することで、ネットユーザーの悪ふざけを完全に否定せず、ソフトに着地させようという狙いがあったと考えられます。
出典
- Fark.com: Contest begins to help name two new eaglets, because just naming them both 'Eagle McEagleFace' would be confusing