『おバカの旅』が現実化?ネットに蠢く愛すべき人類
2006年に公開されたSFコメディ映画『2007年おバカの旅(原題: Idiocracy)』が、今になって「預言書だったのではないか」と囁かれています。500年後の未来で、全人類の知性が著しく低下した世界を描いたこの作品。当時は大爆笑のブラックコメディでしたが、現代のインターネットを眺めていると、どうにも笑ってばかりはいられない光景が広がっているのです。人類のバカを愛でる我々としては、見過ごすわけにはいきません。
## 500年後のディストピアを描いたコメディ映画『おバカの旅』
まずは、この伝説的な映画についておさらいしておきましょう。物語の主人公は、どこにでもいるごく平凡なアメリカ陸軍の軍人ジョー。彼は極秘の冷凍睡眠実験の被験者に選ばれ、500年後の未来で目覚めることになります。
しかし、彼が降り立った2505年のアメリカは、想像を絶する「おバカ」の世界でした。人々は知的な活動を完全に放棄し、エンタメとジャンクフードに溺れる日々。その結果、人類全体のIQは危険なレベルまで低下。皮肉なことに、平凡な男だったはずのジョーが、この時代で最も知的な人間になってしまったのです。大統領にまで祭り上げられた彼が、崩壊寸前の国家を立て直そうと奮闘する、というのが大筋のストーリー。まあ、奮闘の仕方もなかなかおバカなのですが。
## ネットに記録される「人類のバカンス」の数々
映画では、作物が水ではなくスポーツドリンクで育てられ、枯れてしまうという描写があります。「植物には電解質が必要だろ!」と誰もが信じているからです。これを現代人は腹を抱えて笑ったはず。しかし、海外の投稿サイトBored Pandaが特集した「常識はどこへ行ったのかと疑問に思う投稿」を見ると、他人事とは思えなくなってきます。
> The Internet has brought us a lot of things... and the realization that we just might be living in the age of stupid. ... Remember the 2006 movie Idiocracy? It was meant to be a satirical film... Plot twist: it might not have been so fictitious after all.
「インターネットは我々に多くのものをもたらした…そして、我々が『おバカの時代』に生きているかもしれないという気付きもだ。(中略)2006年の映画『イディオクラシー』を覚えているだろうか?あれは風刺映画のはずだった…どんでん返しだ。結局、それほど架空の話ではなかったのかもしれない」と、記事は指摘します。
「WiFiのパスワードが分からない?スクリーンショットを送って」と頼む人。いや、それじゃ意味ないだろ!と思わずツッコミたくなるこの感じ、覚えがありませんか。もちろん、これはほんの一例。ネットの海には、なぜか自分の銀行口座の情報を全世界に公開してしまう人や、明らかに偽物と分かる情報に熱狂する人々など、愛すべき人類の奇行が日々記録され続けているのです。
## 天文学者カール・セーガンが見抜いていた未来
こうした現象は、単に「面白い人たち」で片付けられる話なのでしょうか。実は、かの有名な天文学者カール・セーガンは、著書『悪霊にさいなまれる世界』の中で、まるで現代を予見したかのような警鐘を鳴らしていました。
彼は、科学と技術がごく一部の専門家のものとなり、大多数の一般市民がその仕組みを全く理解できなくなった時、社会は非常に危険な状態に陥ると指摘したのです。人々は専門家の言うことを鵜呑みにするか、あるいは全く信じずに好き勝手な疑似科学に飛びつくようになる。その結果、民主主義は機能不全に陥るだろう、と。まさしく『おバカの旅』で描かれた世界の構造そのものです。SNSで専門家の意見よりインフルエンサーの無責任な発言が信じられる現代は、彼の懸念した未来に近づいているのかもしれません。
## 本当に人類の知性は低下しているのか?
では、本当に人類は全体的に「おバカ」になっているのでしょうか。実は20世紀を通じて、先進国では世代を重ねるごとにIQテストの平均点が上昇する「フリン効果」という現象が観察されていました。しかし、21世紀に入ってから、一部の国ではこの効果が頭打ち、あるいは逆転しているという研究結果も報告されています。
とはいえ、多くの専門家は、これは単純な知性の低下というより「知性の質の変化」だと考えています。スマートフォンや検索エンジンのおかげで、我々は知識を記憶する必要がなくなりました。その代わり、膨大な情報の中から必要なものを見つけ出し、真偽を判断する能力が求められるようになったのです。この新しいスキルセットへの移行期に、一時的な混乱が生じている、という見方もできます。つまり、おバカが可視化されやすくなっただけ、というわけです。
## 「イディオクラシー」を笑う我々が、登場人物になる日
ネット上の珍妙な言動を指差して笑うのは簡単です。しかし、彼らを笑う我々自身も、日々膨大な情報に晒され、深く考えることを放棄しがちな現代人の一人。自分が専門外の分野では、いとも簡単に誤った情報を信じてしまう危険性をはらんでいます。
映画『おバカの旅』を観て「こんな未来は嫌だ」と笑っていたはずが、いつの間にか自分もその世界の住人になっている。そんなSFのような現実が、すぐそこに迫っているのかもしれません。だからこそ、今日もネットに溢れる愛すべき人類の姿を、明日は我が身と胸に刻みながら、温かい目で見守っていきたいものです。電解質は植物には、多分いらないですけどね!
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出典
- Bored Panda: The Internet has brought us a lot of things... and the realization that we just might be living in the age of stupid. ... Remember the 2006 movie Idiocracy? It was meant to be a satirical film... Plot twist: it might not have been so fictitious after all.