サメ待ちダイバー、ウツボに獲物を強奪される
メキシコの海底で、ダイバーのディエゴさんがモリで仕留めた魚をかざしながら、リーフシャーク(ネムリブカ)を待ち構えていた。血の匂いに引き寄せられてきた海の王者との一騎打ち――そのシナリオは、岩陰から現れた体長1メートル超のウツボによって、一瞬にして粉砕された。
## サメが「えっ、俺の番じゃないの」と固まった瞬間
ダイバーの計画は完璧に見えた。モリで仕留めた魚から流れる血の匂いでリーフシャークを誘い、海の王者との対決を動画に収める。段取りとしては申し分ない。
リーフシャークが現れたまさにその瞬間、岩陰からウツボがぬるりと登場。サメが逡巡している隙をつき、ダイバーの手元に一直線で突進し、ためらいゼロでガブリと食いつき、獲物を丸呑みにして消えた。残されたサメは、どことなく呆然とした様子で漂うだけ。
ディエゴさんはこの一部始終を動画に収め、「Not an honorable prey(名誉ある獲物ではなかった)」というキャプションとともに投稿。世界中でバズることになった。「サメに盗られるなら武勇伝になった。でもウツボかよ……」という悔しさが滲む、見事な自虐コメントである。
## ウツボの口には「エイリアン」の武器が仕込まれている
今回の立役者、ウツボについて押さえておこう。見た目はヘビに近いが、分類上はウナギ目ウツボ科の魚類だ。世界に約200種が生息し、サンゴ礁や岩場の隙間を縄張りとして暮らしている。
彼らの最大の武器は「咽頭顎(いんとうがく)」と呼ばれる第二の顎だ。獲物に噛みついた瞬間、口の奥からもう一組の顎が前方に飛び出して食道へ引きずり込む。映画『エイリアン』の捕食シーンをリアルで実装した生き物、それがウツボである。サメが「どうしようかな……」と悩んでいる間に勝負を決められるのは、この機動力あってこそだ。性格は臆病だが縄張り意識は強く、目の前にご馳走が現れたとなれば話は別である。
## 「サメとの対決」という演出が丸ごと瓦解した件
ディエゴさんが嘆いたのは、魚を盗られた損失そのものではない。「ダイバー対サメ」という壮大な物語のクライマックスが、ウツボという乱入者によって完全に消滅したことだ。
自分の失敗を笑いに昇華する「セルフロースト」は、海外インターネット文化の定番ユーモアである。悔しさと笑いを一行に凝縮した「Not an honorable prey」は、セルフロースト芸の教科書に載せてほしいレベルだ。
## 海の掟は「早い者勝ち」、釣り人たちの嘆きは世界共通
実は、海での横取り事件は釣り人・ダイバーの世界でよくある話である。大物を格闘しながら引き上げているまさにその瞬間、アシカやシャチ、あるいは巨大なハタが颯爽と現れて獲物を丸ごとかっさらっていく。YouTubeで「fishing steal shark」と検索すれば、悲鳴と落胆に満ちた動画が山ほど見つかる。
野生動物に「空気を読む」機能も「人間の演出に協力する」機能も、最初から備わっていない。目の前のチャンスを逃さない。それだけだ。次にサメを一芝居の相手に選ぶ前に、まず周囲の岩陰にウツボが潜んでいないか確認することをお勧めする。
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よくある質問
- ウツボは人間を襲うことがありますか?
- はい、あります。基本的には臆病な性格ですが、縄張りに侵入されたり、危険を感じたりすると鋭い歯で噛みついてくることがあります。ダイビングの際は不用意に岩の隙間に手を入れたりしないよう注意が必要です。
- このダイバーはなぜサメと戦おうとしていたのですか?
- 本当に命がけで「戦う」というよりは、おそらくスピアフィッシングで獲った魚を使い、サメを間近で撮影しようとしていたと考えられます。スリルある映像を撮ろうとしたところ、予期せぬゲストが登場してしまったようです。
- 「セルフロースト(self-roast)」とは何ですか?
- 英語圏のネットスラングで、自分の失敗談や残念な点を自らネタにして笑いを取る「自虐ネタ」のことです。他人を傷つけずに笑いを生むユーモアとして、SNSなどで人気があります。
出典
- Bored Panda: 34 Roasts That Are Hilarious Because People Were Talking About Themselves, #1 Not An Honorable Prey