令和8年
團團珍聞
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ホホジロザメ、ナイアガラの滝を跳ぶ?世紀の誤報か大発見か

ホホジロザメ、ナイアガラの滝を跳ぶ?世紀の誤報か大発見か
体長5m、体重2トンの海の王者ホホジロザメが、五大湖に侵入しナイアガラの滝を目指している──。そんな衝撃的なニュース速報が、ある海外メディアから飛び出したのです。報道によれば、サメは8つの水門を突破し、まるで「コカインをキメた鮭」のように滝を跳び越える勢いだとか。だが待ってほしい。海の生き物であるサメが、そもそも淡水で生きていけるのでしょうか?この前代未聞の珍事、ツッコミどころが満載です。 ## ライブ配信準備中!熱狂する報道現場 発端は、海外のニュースサイトFark.comに投稿された一本のタレコミでした。とあるニュースルームが、ホホジロザメの五大湖侵入をスクープとして報道。あろうことか、「サメの進捗をライブストリーミングする」準備まで進めているというのです。なんという前のめりな姿勢でしょう。目の前のスクープ(?)に興奮しきった現場の熱気が伝わってくるようです。 記事で使われた「コカインをキメた鮭 (coked-up salmon) のようにナイアガラの滝を跳び越える」という比喩表現も秀逸です。常軌を逸したエネルギーと生命力を感じさせますが、冷静に考えれば意味不明。しかし、そんな冷静さを吹き飛ばすほどの熱狂が、確かにそこにはありました。世紀の大発見か、それとも壮大な勘違いか。事の顛末を見守るしかない状況です。 ## そもそもサメは淡水で生きられるのか? ここで一度、生物学の教科書を開いてみましょう。ホホジロザメは、ご存知の通り海の生き物。彼らは「狭塩性」といって、塩分濃度の変化に非常に弱い体質なのです。 海水魚であるサメの体内は、常に海水よりも塩分濃度が低い状態にあります。そのため、何もしなければ浸透圧によって体内の水分がどんどん外へ逃げてしまいます。それを防ぐため、彼らは体内に尿素を溜め込み、海水を飲むことで体液の濃度を海水とほぼ同じに保っているのです。もしそんな彼らが淡水に入ったらどうなるか。今度は逆に、体内に水がどんどん流れ込んできて体液が薄まり、細胞が破壊されて死んでしまいます。 もちろん、例外も存在します。ニカラグア湖などに生息するオオメジロザメのように、淡水域に適応した種もわずかながら確認されています。彼らは腎臓の働きを変化させて、尿素を再吸収する能力を持つのです。しかし、今回の主役はホホジロザメ。彼にその特殊能力はありません。五大湖にたどり着く前に、浸透圧の壁に阻まれてしまうはずなのです。 ## 8つの水門と高さ57mの絶壁 では、地理的なルートはどうでしょう。ホホジロザメが大西洋から五大湖を目指す場合、必ずセントローレンス海路を通ることになります。この海路には、水位の違う水路を船が航行するための「閘門(ロック)」、つまり水門が複数設置されています。報道にあった「8つの水門を突破」という話は、この閘門を指していると考えられ、意外にも地理的な整合性が取れているのです。 しかし、問題はその先。オンタリオ湖とエリー湖の間には、あのナイアガラの滝がそびえ立っています。最も高いカナダ滝の落差は実に57メートル。鮭どころか、どんな魚も遡上不可能な自然の巨大な壁です。これを「鮭のように跳び越える」というのは、物理的にありえない相談というもの。「コカインをキメた鮭」がどれほどの跳躍力を持つのかは定かではありませんが、ビル15階分に相当する高さの瀑布を飛び越えるのは、さすがに無理があるでしょう。 ## なぜ「サメ報道」は暴走するのか 生物学的にも地理的にもありえない。ではなぜ、こんなニュースが生まれてしまうのでしょうか。背景には、人間が「サメ」という存在に抱く、根強い恐怖と好奇心があります。 記憶に新しいのは、ハリケーンが襲来するたびにSNSで拡散される「街中を泳ぐサメ」のフェイク画像、通称「ハリケーン・シャーク」です。何度も偽物だと指摘されているにもかかわらず、人々はつい信じ、拡散してしまう。映画『ジョーズ』が植え付けた巨大ザメへの恐怖と興奮が、私たちの理性を時々麻痺させるのかもしれません。 今回の報道も、センセーショナルな話題に飛びついた記者の勇み足だったのか。あるいは、すべてを分かった上で世間を騒がせるために流された、高度なジョーク記事だった可能性も考えられます。Fark.comの投稿に付けられた「Facepalm(やっちまったな)」というタグが、この騒動の真相を物語っているようです。 ## それでも我々は「滝を登るサメ」を夢見てしまう 結局のところ、ホホジロザメがナイアガラの滝を跳び越えることはありませんでした。常識的に考えれば当たり前の結論です。しかし、このニュースに一瞬でも胸を躍らせ、ライブ配信を待ち望んだ人々がいたこともまた事実。 科学的に不可能だと分かっていても、「もし本当にそんな規格外のサメがいたら…」と想像を膨らませてしまうのは、人間の愛すべき性(さが)ではないでしょうか。常識を疑い、不可能に挑む精神。たとえそれが壮大な勘違いから生まれたものだとしても、その情熱こそが、退屈な日常に一石を投じ、世界をほんの少し面白くしてくれるのかもしれません。滝を登るサメは現れなかったけれど、私たちの心の中では、今も元気に跳び続けているのです。

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出典

  • Fark.com: Great white shark clears "eight locks and then leap up Niagara Falls like a coked-up salmon". News room in process of setting up "livestream of the shark's progress". Never mind that whole salt/freshwater issue
海外動物勘違い